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主催事業

あっという間の2週間

2007/07/08
村井 健(演劇評論家/日露演劇会議専務理事)

ノボシビルスクで、日本語教師のみなさんと

ノボシビルスクで、日本語教師のみなさんと

今回の国際交流基金の助成による「文化講座」は、ちょっと強行軍だった。東京から一路、モスクワ―ノボシビルスク―オムスク―モスクワと、ほとんど休みなし。われながらよくぞ働いたものと思う。以下、その概略を交流基金への「報告書」をベースに、ご報告する。
5月13日早朝ノボシビルスクに到着。出迎えのイリーナさんご夫妻の車で市内のホテルへ。ちょっと仮眠し、11時30分にシベリア北海道文化センターへ。というのも、この日は第1回となる「西シベリア地区日本語弁論大会」に出席、上級者の審査をすることになっていたからだ。が、行ってみて驚いたのが、参加者の日本語のうまさ。日本の若者よりはるかに丁寧な日本語、しかも流暢! いずれも甲乙つけがたく、いずれを入賞にするか大いに迷った。
この審査終了後、特別講演として村井が「日本演劇」についてビデオを使い約1時間30分講演、質疑応答を行ったが、すこぶる反応がよく、日本文化への関心の高さを改めて実感した。講演の後、同行の渡辺教授ともどもシベリア各地から参集された日本人の日本語教師の方々と会食、情報の交換を行った(写真1)。また、ノボシビルスク滞在中、ノボシビルスク教育大学の方と話し合い、次年度から短期の「日本文化講座」設置で合意したのも収穫の1つだった。
翌14日午後、特急列車に乗り込み、いざオムスクへ。午後3時45分発でオムスク到着は午後22時10分。この列車のよさは途中の景色を満喫しながらのんびりできること。渡辺夫人が通訳として同行したイリーナさんに次々にロシア語について質問したり、食堂車ににコーヒーを飲みに行ったり、写真を撮ったりと退屈する暇なしだった。
この日最大のびっくりは、オムスクに着いて、出迎えてくれた国際部のイッセルス部長と途中のスーパーで、ビールと水を買っていたら、レジの前でドラマ劇場の主任演出家とばったり出会ってしまったこと。これには彼も私も驚いた。2番目のびっくりは、着いた農業大学のゲストハウスの部屋の広さ。寝室(ダブルベッド)+キッチンという贅沢な部屋。冷蔵庫にはイッセルス部長差し入れの食料(果物、ハム、パン、ジュースなど)も。早速ビールで再会を祝して乾杯した。会話はもちろんハナモゲラ語だ。そばにいたナターリアさんが目をぱちくりして驚いていた。

オムスク大学講堂での授業

オムスク大学講堂での授業

15日は打ち合わせ。今年も受講者多数。村井、渡辺教授とも受講希望者がそれぞれ約100名超となったため、通常の教室ではなく大学内の講堂を使ってのものとなった(写真2)。16日以降は連日講義。日本の大学より手ごたえがいいのは相変わらず。とにかくみんな熱心だ。もちろん、試験の結果も上々で高得点者が多く出たことはいうまでもない。また、滞在中、農業大学でのレクチャー(18日:村井、21日:渡辺)、オムスク大学での円卓会議(学長および各大学関係者)、プーシキン図書館でのオムスク市の文化団体関係者との円卓会議も開かれるなど、充実した日々を過ごすことができた。最終日の23日には、体育大学から次回(来年)のレクチャーには同大学の学生も受講させたいので村井さんからもオムスク大学に話していただきたいとの申し出があり、これを伝えたところ、オムスク大学でも大学間の壁を越えた講座にするようただちに調整するとのことだった。懸案の日本語教育についても現在、実施に向け、調査を行っているとのことだった。
ただし、気になったのは、この秋から誰かは知らないが日本人が有料の「日本語講座」を開講するらしいとのニュースを聞いたことだ。押しかけらしいが、ちゃんとした人であることを祈る。

円卓会議での渡辺教授のスピーチ

円卓会議での渡辺教授のスピーチ

ところで、このオムスク滞在中、会員の松下さん、田代さんのお2人が、松下朗さんのお墓参りのためやってきた(写真4)。写真は、その様子。ドラマ劇場のミーシャも一緒だ。お墓は、第5劇場のユルコーバさんなどの手できれいに掃除されていた。さらにこの後、第5劇場での演出作品(清水邦夫作「楽屋」)打ち合わせのため、やはり当会会員で青年劇場の堀口さんもオムスクへ。なにやら、5月のオムスクは日本デーの感じだ。写真は、第5劇場での観劇後、劇場正面で撮ったもの。一緒に写っているロシア人は、第5劇場の文芸部長のパーベルさん。
新築されたアレルキン人形劇場(写真5)は、大小2つの劇場と博物館、ホテルを持つ、しゃれた劇場。以前、ドラマ劇場にいたナースチャさんがここの文芸部にいる。この9月には日本の乙女文楽がこの劇場で公演を行う予定だ。

さて、モスクワだが、モスクワでは、村井が24日にGITIS(ロシア国立舞台芸術アカデミー、モスクワ最大の総合演劇大学)の学長と再会、25日午後2 時から同大の図書館で「日本演劇」についての講演を行った。また同じ25日午後6時からレーニン図書館の東洋文献センターで「日露演劇交流史」を講演(在モスクワ日本大使館広報部主催)。金曜日の夕方、卒業式とも重なったため聴衆は思ったより少なかったが、熱心な質疑応答が行われ、2時間の予定が2時間半に及んだ。
このモスクワでの講義が終わってやっと休憩。大使館の方たちと気持ちよくビールを飲んだ。場所は、モス芸の地下レストラン。ピアノとジャズをバックにしての打ち上げ。あっという間の2週間だった。

松下朗さんのお墓で

松下朗さんのお墓で

アレルキン人形劇場

アレルキン人形劇場