2016年度「ハイスクール・ドラマキャンプin SAPPORO」終了報告
今年5年目を迎えた「高校生のためのハイスクール・ドラマキャンプin札幌」が7月20日21日の2日間にわたって開催されました。1年生8名、2年生5名、3年生3名の計16名が参加。初めて参加の1年生も毎年参加した3年生も一緒で、今年は演技担当の先生も参加しました。
【西村洋一さんからの報告】
このワークショップを担当させていただくのは、今年で3回目になりました。今年は例年より参加人数も多く、活気のあるワークショップになりました。
わたしが行ったのはレーチのトレーニングです。レーチというのは、ロシアの演劇学校などで行われている、ボイスと台詞のトレーニング法で、スタニスラフスキー・システムに基づいたものです。
午前中2時間、午後2時間、計4時間行いました。午前は基礎的なトレーニング、午後はテキストを使っての応用です。テキストには、宮沢賢治の「マグノリアの木」を使いました。
レーチに限らず、スタニスラフスキー・システムによるトレーニングを行なう場合、一番のベースになることが一つあります。それは、身体全体と意識が有機的につながって、一体となって声を出したりすることができるか、ということです。ワークショップをする場合、この点が伝わるかどうかがポイントになります。
午前の基礎的なトレーニングでは、まだ「わかったような、わからないような・・・」という反応もありました。午後になると、皆エネルギーの使い方も分かってきて、テキストに対する面白い取組みも見られるようになりました。
後日にいただいた参加者の感想を読むと、わたしが思っていたよりも、的確に理解してやってくれていたことがうかがえました。身体全体を用いて声を出す、ということの大切さは伝わっていたようです。
【守輪咲良さんの報告】
ワークショップ前に届いた参加者の志望動機に、技術を身につけたい、スキル向上のためといった言葉が目についたので、技術以前に大事な「感動表現」を基本にした内容を考え、「想像力」について取り上げました。
〈午前〉
「まずはやってみよう!」①
◎簡単な行動を理由づけしてやってみる。
・ジャンプする→なぜジャンプするか自分で考えてジャンプしてみる。
・歩く→初めて自分で作ったケーキを食べてもらいたい人に持って行く。
バスが来たので乗ろうとして急いで歩く。ケーキが壊れないように。
学校の先生に呼び出しをされて、先生の部屋に向かって歩く。
◎ 感覚を使ってやってみる。
・ 温かい砂のうえに寝転ぶ。
・ 泥んこにまみれる。
・ 雨にふられる。
※からだを自由に動かし、衝動を声に出してやってみる。
※日常でのことと、舞台上でのことの違いを説明。一生懸命やらないと人には伝わら
ないことを説明。集中力の説明で子供の遊びを例える。
◎同じ行動を二つの違った設定でやってみる。
・ 着替える→朝起きて学校に行くために着替える。
特別な日の朝、そのために着替える。
※ 設定が違うと演技が変わること。内面のドキドキさがあると行動のテンポ・リズムが変わることを説明など。
〈午後〉
「まずはやってみよう!」②〜感動表現に触れる!〜
テキストを使用
「わが町」(ソーントン・ワイルダー作)より。エミリーとジョージのやりとりで、エミリーは月が明るすぎて勉強が手につかない。
・ 記憶のなかの感動について説明する。自分が見たことのある綺麗なものを探す。
その時のイメージでセリフを言ってみる。
※全体に生徒たちは身体が自由に動かなかったり、声が出しにくかったりする。想像力を使って、身体や声で表現するのがみんな苦手。ひとりだけのびのびとやっている生徒が目をひいた。
「上手くできない」ことは「ダメなこと」ではなく「自分が今、何ができて何ができないか、何が苦手か」などを知ることが大切なことを説明して終了。
【生徒さんたちの感想】
ワークショップ終了後、その場で参加者に「ハイスクール・ドラマキャンプを受けて」と題して、感想を書いてもらいました。
第一日目(レーチ)
・ 最初は何をしたらよいか、何をしているのか分からなかったけど、後になるにつれ動きが声とつながっているということが分かった。(1年)
・ 背中動いてなかったことが分かりました。不思議な練習をした感じですごく良い経験でした。(1年)
・ 最初は何を何のためにやっているのか分からなかったけど、自分で実際に体を動かして喋ってみて、演技をするうえでとても大切な事を教わったんだと思った。(1年)
・ 「体と声はいっちする」というのが良く分かりました。(1年)
・ 声を発する時に出すエネルギーのちゃんとした使い方を今一度、理解する事ができました。(2年)
・ エネルギーの流れを体感することができました。(2年)
・ 今回で演技の見方や考え方などが変わりました。(2年)
・ 自分の体でどこが動きずらいか、どこの動きと声がリンクしない等、新たに課題が見えてきました。(3年)
・ 身体の動きと声がしっかり合うと、それなりのものになるのだと再確認できた。身体の感覚でしっかり覚えられたと思う。(3年)
第2日目(演技)
・ 想像するのは苦手じゃないけれど、それを声や体で表現するのがすごく難しかった。(1年)
・ 想像しながらそれを「楽しむ」ということがすごく難しいと思った。普段から自分の感情を知っていくことを大事にしていこうと思った。(1年)
・ 前向きにならないと演劇はできないこと。「月」など実際にない物をイメージすることなど、いろいろな話が聞けて楽しかった。(1年)
・ 自分を否定するのはやめようと思いました。少しずつ考え方を変えていきます。(1年)
・ 自分は気持ちを出すことに抵抗があったのですが、これからはもっと自分を意識しようと思いました。(2年)
・ 自分を出すことをあまりしていなかったなと改めて確認しました。自分の殻に入らず、出て行けるように精進します。(2年)
・ 自分の思ったことをうまく出すのに、これからは大きくアクションを起こしてみようと思いました。なにか意識しながら生活してみようと思います。(2年)
・ 相手に何かを伝えるのも重要だが、見ている人にどう伝わっているかがさらに大切だと思った。発見とすべてがつながっていることの再確認ができました。(3年)
・ 夢中になることが集中につながっていくのかなと思いました。私は体を動かすことが苦手なんだと感じました。これが大きな課題です。
私は感情を表に出すのが怖いと感じることが多かったのですが、もっと出していきたいと思いました。もっと周りに目を向けて、当たり前を一つ一つ記憶していこうと思いました。(3年)