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共催事業

オムスク国立第五劇場 「33回の失神」を観て 於:青年劇場 公演日11月21日(「日本とユーラシア」1月15日号より転載)

2011/01/12
 「日本とユーラシア」編集部

オムスク国立第五劇場 『33回の失神』の「記念日」のシーン

オムスク国立第五劇場 『33回の失神』の「記念日」のシーン

アントン・チェーホフが「チェホンテ」名義で書いた「熊」「記念日」「結婚申込み」を「タバコの害について」でつないだというこの作品、これまで見た別の劇団による同じ演目のどれよりもエネルギッシュでおかしく、2時間半の上演時間があっという間に過ぎていった。全編にわたって生楽器のオーケストラがお囃子のように効果音を表現、原作にはない歌まで入り、「結婚申込み」の猟犬2匹がぬいぐるみをかぶった俳優で登場するなど、戯曲の内容を限りなく具体化してパワーアップ。メイエルホリドの構成・台本というふれこみ以上に、演出の斬新さが全面に出ていた。登場人物が「33回」失神するというタイトルは、決して誇張ではなかった。ちょっとした行き違いで発生する大問題を、これほど笑い飛ばせる戯曲は、失神するに値するというものだろう。

舞台が終わって、30分ほど演出家と出演者にインタビューをする機会に恵まれた。同劇団で2回目の演出を担当するオレグ・ユモフ氏はブリヤート共和国の出身。モスクワ演劇アカデミー(GITIS)でピョートル・フォメンコに師事した新進気鋭の演出家だ。チェーホフ誕生150周年の終盤に日本でこの出しものを上演した狙いは、「屈折したユーモア感覚をもつチェーホフ劇の、本当のユーモア(笑劇)をわかってもらいたい」ということだと言う。メイエルホリドの構成にはない、「タバコの害について」を入れてコミカルなオリジナル劇を作り上げた。

出演者に客席の反応について尋ねると、「日本の観客は静かだと聞かされていたが、みんな字幕を読むのが早く適切なところで反応してくれるし、俳優の演技をよく見ている。いい意味で裏切られた」という回答が返ってきた。

今回の来日公演は、(社)日露演劇会議と会場の青年劇場の招聘によるもの。オムスク国立第5劇場は、今年で創立20周年の若い劇団だ。ディレクターのアレクサンドラ・ユルコーヴァ氏によると、「第五劇場といっても、五番目ではありません。」オムスク・ドラマ劇場に次ぐ実力ある劇団で、常時40近くのレパートリーを上演している。「33回の失神」はロシア国内でも初演という新しい演目で、日本公演を終えた後、サンクトペテルブルグでのチェーホフ・フェスティバル出演をはじめ、海外での公演も決定しているという。知る人ぞ知る「演劇都市」オムスクで、着実に実力を伸ばしつつある第五劇場。モスクワやペテルブルグの演劇を見慣れている者にとって、こうした劇団が日本で演じてくれるのは本当にうれしい。2000年以来、日本の演劇界との交流もさかんだそうで、今後の発展に大いに期待したい。

オムスク国立第五劇場 『33回の失神』

オムスク国立第五劇場 『33回の失神』