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活動報告

第11回演劇教育研究会報告

2017/01/09
 日露演劇会議事務局

第11回演劇教育研究会ご報告 「自立した俳優の仕事について〜その2」

6月から11月にかけて日露演劇会議主催による演劇ワークショップを開催した。

スタニスラフスキー・システムの土台となる「レーチ」と「メソード演技」を抱き合わせたワークショップの予定だったが、都合により「レーチ」がキャンセルとなったため、3月に実施した「自立した俳優の仕事について」をさらに押し進める形での「メソード演技」入門ワークショップとなった。

月に一回のワークショップで全6回。演技の基礎中の基礎として俳優が舞台上に「立つ」こと、虚構の世界に「いる」ことを中心に集中の仕方を体験してもらった。

会場は高円寺K’Sスタジオ本館。参加者は8人で小劇場系の俳優、プロとして声優などの仕事に携わる方々など。参加者は全6回参加、一回だけの参加など参加状況はまちまちだったが、全体に女性がとても積極的で熱心に取り組んでいた。

演技の入門を舞台上での「見ること」からはじめた。テキストはパトリック・シャンリーの「お月さまにようこそ」から「喜びの孤独な衝動」を使用。

場面は2人の登場人物が深夜に公園の池のそばにいるところからはじまる。

いきなり心情的なやりとりからはじめようとする参加者に、演技の基礎としてなにが必要なのかを説明。その後、自分がどういう場所にいるのか、演技しようとせずに、まずそこにいてみることからはじめる。次にその場所にいたら何が見えるのか──「見る」ことから「いる」ことへ。さらになぜそこに「いる」のか? なにをしているのか? など、そこにいながら自分のやるべき事へと導入。

舞台上で自分がどういたら良いのか、何を頼りにいたら良いのか分からずにいる役者はたくさんいる。初心者はもちろんのこと、プロであっても舞台に立てていない役者は数多い。今回の参加者も例外ではない。演技はいきなり何かをやろうとする事ではなく、まず舞台上に「いる」ことからはじめる事を説明。

集中の仕方が分からず、緊張から逃れようとして自分を道化てみせたり、おかしな事をやっていた役者が自然に舞台上にいられるようになるだけで存在感が違ってくる。

また今回のワークショップでは、「メソード演技」のリラックスゼーションで呼吸や身体の力のぬき方などに時間をかけ、与えられた課題に集中しながら本人の使っていない内面からのエネルギーを外側に引っ張り出す試みにチャレンジした。

さらにテキストに入る前にごく簡単なエチュードをやったが、やはり場所を「見る」ことからはじめる。エチュードでは与えられた課題(図書館にきた)に対して左脳思考的〈ストーリーづくり〉をしようとする参加者に、行動優先の右脳思考に切り替えるように要求。観客が舞台上のできごとや人物の行動をどう観ているかを話し合い、観客と共有できる演技であるためには何が必要であるかを説明。最後に、テキスト使用では相手役とのやりとりに取り組んだ。

演技の基礎に興味をもってもらうためには、役者が自分のやっていることに意識がいき、気づくことが大切だが、今回の参加者が積極的で柔軟性があったことが成果を上げていたと思う。少人数ながら毎回の参加者の手応え、変化が見られた。

月に一回だけのワークショップだったが、初歩的なこと、例えば「見ること」などを日常生活のなかで、また仕事で応用したと参加者から報告があった。

今後は日露演劇会議としての普及活動をあらためて検討し、演劇教育研究会の次へのステップとしたい。