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活動報告

第9回演劇教育研究会

2016/04/11
 日露演劇会議事務局

「タバコの害について」公開稽古が終わって

3月13日(日)13:00より、東高円寺のスタジオでチェーホフ作「タバコの害について」の公開稽古が開催されました。今回の研究会は俳優、演出、演技指導者、チェーホフ研究者など10名が集まり、公開稽古のあと、演技を含めた演出や作品について自由に話し合いました。これまで研究会では日本における「正統な演技」の問題を取り上げて話し合いを重ねてきましたが、実践と並行しての話し合いは初めての試み。16:00終了後、親睦会にうつり、さらに19:00までいろいろな話が次々と話し合われました。以下、主だった話の内容を箇条書きにします。

・  今回の作品の難しさについて→「普通に生活している人の人生」として受けとめていくならば難しいことはないのではないか。

・  小道具や衣装なしで演じるのは、勉強中の役者にとって問題だという話。日本の役者は演技しながら衣装や小道具を使いこなせない。演技中に無対象のものを意識的に自然に使うのは難しく、演技の重要な勉強であることが理解されていない。ロシアでもニューヨークでも生徒はシーンのための小道具や衣装を自分で持ってきていた。

・  メソードで俳優に求める「sense of truth」 について

・  台本の「サブテキスト」の話が出た。
スタニスラフスキーがサブテキストについて研究しながら途中から撤退してしまったという話。メソードにおいて、サブテキストという考え方があるかとの質問。

・  メソードでは相手には聞こえていない「内セリフ」を言葉にしていきながら役の内面を探る。解釈することを避け、役者は演技しながら考え発見していくことに徹していた。演技指導にスタニスラフスキーの「用語」が使われることはほとんどないが、指導される内容は全くスタニスラフスキー。自分が今どこにいるのか、どうしたいのかなどを舞台上で、与えられている場面で実際に考え、具体的に見つけていく。

・ 「共通言語」が演劇人の間にない。共通言語がないために、現場での演出家と俳優の間のコミュニケーションに時間がかかる。日本の訓練の場、養成所なども共通言語が確立されていないので、みなバラバラなことを教えている。問題ある演劇養成の現場例がでる。スタニスラ フスキー・システムを学んだ人も自国に戻ってから独自の方法論と言葉を使ってしまう。かつて、共通言語を作ろうとしたがそれぞれ違うことばかり言ってまとまらなかった。

そのほかチェーホフについての話のほか、スタニスラフスキー、メソード演技、マイズナーなどの話がいろいろと出ました。点になっていた演劇人が少し線でつながるような手応えがあって、実り多い話し合いになりました。参加してくださった方々に感謝いたします。(守輪記)