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主催事業

2018年度「ハイスクール・ドラマキャンプ in SAPPORO」

2019/03/06
 日露演劇会議事務局

2018年度「ハイスクール・ドラマキャンプ in SAPPORO」終了

担当理事:守輪咲良

 

「ハイスクールドラマキャンプ」は日露演劇会議の普及活動の一環として毎年開催されてきた演劇ワークショップです。高校生を対象にスタニスラフスキー・システムの「正統な演技の基礎」に触れてもらおうという目的ではじめられました。札幌の北海道芸術高校は、指導にあたっている講師の方がスタニスラフスキーをもとに指導している数少ない高校で、ドラマキャンプの主旨に共感してくれ、学校内でワークショップをやって欲しいという要望があって実現しました。今回で6回目になります。

 

前年は参加希望者が充分集まらず中止となりましたが、今年度は過去最多の参加者数22名で、7月23、24日の2日間、講師はレーチの西村洋一、演技指導は守輪咲良。学校からは指導の先生も参加しての開催となりました。

 

生徒たちはレーチでは〈スタニスラフスキー・システムに基づいた声と言葉のトレーニング〉を体験。日本で一般に行われているいわゆる発声法とは大きく違い、生徒たちにとっては全く新しい体験になります。身体全体で声を出せたときには本人だけでなく他の生徒たちにも声の違いが分かります。

演技では「立つ」「すわる」などごく簡単な課題から始めましたが、「なぜ立つのか?」など〈目的を持って行動する〉スタニスラフスキーの基礎、演技の土台に集中しました。

こうしたシンプルな行動の基礎は、日常のように簡単にさらりとやって終わってしまいがちですが、単に自然にできたかどうかで終わるのではなく、「立つ」という行動が、例えば「ただ〈漠然と〉友だちを見つけて立つ」のではなく「自分にとって何か〈特別な〉友だちを見つけて立つ」という〈特別な瞬間〉になるまで引き上げられて、初めて演技の勉強が面白くなります。

いつも参加者の様子を見ながら、高校生の集中力がどの程度まで頑張れるかなどの迷いがあって躊躇してしまい、今回もウォーミングアップ程度で午前中が終わりました。

午後には課題をもう少し具体的にして「お化け屋敷のなかに入る」をやりましたが、人数が多いので細かい指導の時間が充分とれず残念でした。参加者は1年生が多く、特に女子が積極的で率先して前に出て行く元気な姿が見られたこと、先に前へ出てから何をどうしようか考えている真剣な生徒の様子などを見ながら、例年との違いを大きく感じ、午前中にあった迷いや躊躇は不要だったのかも知れないと反省。そして高校生であってもスタニスラフスキー・システムの演技指導は充分可能だし、指導の仕方次第で遊びながら真剣にもっといろいろな取り組み方ができると思えたことが今回の収穫でした。これまで自分が思っていた以上の可能性を感じられ勉強になりました。

年に一度、二日間だけの体験ワークショップではありますが、高校生に国際標準の演技の基礎に少しでも興味を持ってもらい、演劇人への道に進んでいく時、また演技に迷った時など、何かの参考になってもらえたらと思います。

願わくばワークショップに留まらず、「高校生のためのスタニスラフスキー・システムによる演技塾」の開設、どこかで実現しないものかと思っているのですが・・・。

高校生という若くて吸収力のあるときにこそ、舞台上の「特別な瞬間を演じる」ための訓練に時間をかけてじっくり指導ができたら、そこにスタニスラフスキー・システムに則ったオーソドクシィな演技の新しい芽が育つだろうと思うのです。

以上