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会員関連

ぐるぐる回って繋がる

2011/12/16
 日露演劇会議事務局

話変わって、演劇のこと。

ある日、かつてのホームステイ先のナジーラが電話をかけてきました。ある劇場に紹介したい、と。それはセンターから歩いて3分ほどの劇場で、存在は知っていたのですが、いつも扉は閉ざされていて、廃墟のような雰囲気です。さほど期待もせず、祝日にナジーラと待ち合わせてそこを訪れました。主宰であり、またキルギスの大女優だという女性ジャマルに紹介され、すぐにホールに通されました。そこには若い俳優が40名ほども集まっており、新作の稽古に励んでいました。「日本からお客様です。シーンを見せましょう。」ということで、今まさに稽古中の、新作の冒頭シーンを見せてくれました。

キルギスの女優ジャマルさん

そこから先は夢の中の出来事のようであり、そしてその夢から、まだ醒めていないような気がします。

それは、キルギスの伝説を題材にした、キルギス語による、キルギス人のための、まったく現代的な手法を使った寓話劇だったのです。舞台奥にうっすらと見えた人物が太鼓らしいものを抱えています。ドン、と聞いたことのない打音が響きました。それは探していたシャマンの太鼓でした。キルギス人の祖先になる男の子と女の子が、シャマンに導かれ、小舟に乗り、荒れる濁流を真っ二つに割って進みます。シーンは10分ほどでした。すっかり興奮した私はメチャクチャに喋りまくり、劇団の連中もメチャクチャに質問を投げつけてきます。稽古後は写真や映像で自分の演劇を紹介しました。もちろん「人魚まる裸みだれ髪」のクライマックスも見せました。荒波にのまれそうな小舟、地鳴りのような太鼓の響き、主人公たちの持つ半弓。「似てる!似てる!みんな見て!」と主宰のジャマルが興奮しています。

キルギスの太鼓

ジャマルが云いました。「私は今までいろいろな国で演劇の仕事をしてきました。日本はキルギスと似ていると聞いています。顔も似ていて、文化も似ているのでしょう?でも私は日本に行ったことがありません。文化を知りません、演劇も知りません。今までそのチャンスはなかったのです。でも、ごらんなさい。今、あなたが、ここに来てくれたんです。」

彼女はソ連時代は国立劇場の有名な女優で、映画にもたくさん出演しているそうです。独立後すぐに国立劇場を離れ、自費でこの劇場を立ち上げました。俳優は10代~20代の若者のみ。キルギス語でキルギスの伝説を基にした現代の寓話を発表し続けています。

「私たちは家族です」とジャマルは言いました。「月曜日から金曜日の14時~17時、毎日私たちはここにいるのです。そして歌ったり踊ったり、お喋りしたり、稽古をしたりします。あなたはここでお芝居をなさい。毎日来なさい。すぐにキルギス語を覚えますよ。」

あまりの幸福にクラクラしていると、主役の女の子が傍らに来て話しかけます。「こないだ学校に来てくれましたね。どうもありがとう。3月3日、招待してくれましたね。思い出しましたか?そうです。私は第一寄宿学校で日本語を勉強しています。」

グルグルまわって、何かが繋がっています。

 (トゥングチ劇場内)

センターの仕事は定時です。残念ながら平日の14時~17時の稽古に行くことはできません。しかし、キルギスでの生活での大きな進展であることに変わりはないと思います。

長くなりました。またレポートいたします。三寒四温、今日は大雪のビシュケクより。